2020.12.08
投資について理解を深めよう。そう思って経済誌を買って読み始めると、必ず「イールドカーブ」という見慣れない言葉に出会います。
たいてい()内に「利回り曲線」という説明書きがなされているから、何となく利回りをグラフ化したものだろうと、想像はつくことでしょう。でも、詳細まではわからない。そんな方も多いのではないでしょうか。
しかしご安心ください。何も恥ずかしいことはありません。というのも、「イールドカーブ」という言葉は頻繁に使用されている割に、投資家も理解不十分な傾向が強い概念だからです。入門者がわからなくて当然です。
そこで今回のテーマは「イールドカーブ」。
イールドカーブとは何なのか。それを学べば何が理解できるようになるのか。
解説します。
イールドカーブの言葉の意味や概念を学ぶ前に、まずは「イールド」という単語の意味を理解する必要があります。
そこでこの章では、まずはイールドについて解説し、イールドカーブの理解を深めます。
イールド(yield)とは、利回りを意味します。利回りとは、単純に言えば年間の投資リタ―ンのことです。債券なら、購入価格と支払われるクーポンによって決定されます。
クーポンとは利付債に付いている利息で、利札を意味します。
ペーパーレス化が進む前(券面が発行されていた頃)は、債券の券面に付いている利札を切り離し、金融機関に持参することで利息が受け取れました。しかし、債券の電子化が進んで現物が発行されなくなっているため、現在は本来の意味ではあまり使用されなくなり、利子そのものや表面利率(クーポン・レート)のことを指す場合が多くなっています。
債券の投資家は、債券同士を比べるため、「最終利回り」と呼ばれる利回りをよく使います。
最終利回りとは、「終利」とも呼ばれ、すでに発行されている債権を購入し、償還期限(満期日)まで保有した際の利回り、つまり、投資元本に対する収益の割合です。すべての利払い金と、購入時からの元本価格の上昇、または下落分が反映されています。
債券の利回りには、再投資を考慮しない単利と、再投資を考慮する複利がありますが、日本では利付債は単利、割引債は複利で計算するのが一般的です(海外では利付債、割引債にかかわらず複利が一般的)。
なお、利付債券の最終利回り(単利ベース)は次の計算式で求められます。
利付債券の最終利回り(%)=[年利率+(償還価格-買付価格)÷残存年数]÷買付価格×100
イールドカーブとは、グラフ上の横軸に期間(債券の残存年数)をとり、縦軸に金利(最終利回り)をとって、各債券の残存年数と最終利回りに対応する点をつないだ曲線のことです。このイールドカーブにより、将来の金利見通し、はたまた経済が今後、拡大基調か縮小基調なのかまで占うことも可能です。つまり、経済環境を表す良い指標というわけです。
代表的かつ最も頻繁に使用されているイールドカーブには、国債のイールドカーブがあります。
将来、金利の上昇が予想されているのか、または低下が予想されているのか。それはイールドカーブの形状から判断できます。例えば、イールドカーブが右肩上がりの場合には、市場は金利が上昇すると考えています。
イールドカーブは、長期金利と短期金利のいずれかが上回っているか、あるいは同一水準にあるかによって3種類に分類されています。
「順イールドカーブ」「逆イールドカーブ」「フラットイールドカーブ」です。
順に解説していきます。
イールドカーブは、通常、右肩上がりです。そして、この形状のイールドカーブが「順イールドカーブ」です。つまり、長期金利が短期金利を上回っている状態のことで、経済が成長する景気拡大時によく見られます。
このような環境下では、債権はインフレ等の影響もあって、長期保有の方が短期保有よりハイリスクと考えられています。そのため、投資家はインフレと将来の金利上昇の見返りを求め、長期債権には高い利回りになっていきます。
なお、順イールドカーブ時には、銀行は融資を活発化させるので、企業は新規事業に取り組みやすくなります。また、短期金利の影響を受け、住宅ローンの変動金利は低くなります。そのため、個人は住宅を購入しやすくなるという環境が整います。
債券は期間が長くなればなるほど、インフレの影響やデフォルトのリスクが高まるので、その分、リスクに対する見返りとして金利が上乗せされ、通常はイールドカーブは右肩上がりを描きます。
しかし、こうした正常な状態ではなく、短期金利が長期金利を上回り、右肩下がりとなるのが逆イールドカーブです。経済成長が停滞し、景気後退が迫ってきていると市場は受け取る傾向があるため、償還期日の近い短期債券の方が長期債券よりも高いリスクがある判断。結果、短期金利が長期金利を上回る状態となります。
一般的には、将来の金利は下落し、景気後退のサインとして考えられています。過去の例では、およそ景気後退が始まる12ヵ月から18ヵ月ほど前にイールドカーブは反転しています。
景気が拡大から後退に向かう時期、あるいはその反対の時期に見られるのがフラットイールドカーブです。フラットイールドカーブは、短期金利と長期金利が同一レベルにある状態です。
景気が拡大から後退に向かう時期では、将来、金利下落の見通しが出てくると、まずは残存期間の長い長期債券が最初に買われます。すると、短期金利が上昇して長期金利の利回り水準に達し、イールドカーブの傾斜が小さくなることがあります。
反対に、景気が後退から拡大に向かう時期では、将来、金利上昇の見通しが出てくると、まずは残存期間の短い短期債権が最初に買われます。すると、長期金利が上昇して短期の利回りが同レベルになって、逆イールドカーブの傾斜は小さくなることがあります。
これがイールドカーブのフラット化、すなわちフラットイールドカーブです。
最もよく見られる例としては、急激な経済成長を抑えるため、中央銀行が金利を引き上げる時です。この時、金利引き上げに応じて短期金利が上昇し、インフレ期待は収束。結果的に長期金利は低下します。
イールドカーブを見れば、将来の金利の見通しがわかります。上昇金利が期待できれば、経済は拡大基調に入りますし、金利の下落が予想されれば、経済は縮小基調を迎えるでしょう。つまり、イールドカーブは経済環境を表す良い指標というわけで、投資をするには欠かせない知識なのです。
しかし、投資はイールドカーブだけでわかるものではありません。
インベスターズビレッジではそれを踏まえ、主に「投資」と「ビジネス」(経営・M&A)に的を絞って取り上げています。また、様々な分野への投資の知識と実際の流れをカリキュラム+テキストに加えて、実践でも学ぶことを大切にしています。
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