2021.01.26
2010年以前は、「みなし取得費の特例」といって「実際の取得価額」と「みなし取得費」のいずれか有利な方を選択し、その譲渡損益を計算できる制度がありました。しかし、この特例はすでに終了しており、それに伴い、一般口座での開設はメリットはほとんどなくなり、今では多くの個人投資家が「特定口座を開設し、源泉徴収あり」を選択しているかと思います。そのため大抵の方は確定申告にあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、仮に投資で損失を出した時には、確定申告は必須です。
また、老後に活きるテクニックや、万が一災害に被災された際にも知っておくべきテクニックも存在しますから、確定申告についてはある程度の知識を持っておくべきでしょう。
そこでこの記事では、知らないと損をする確定申告のテクニックを紹介します。
例えば、上場株式を売却して損失を出してしまった場合、利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」という特例があります。
この特例は確定申告をすることで適用され、結果的に節税につながるメリットがありますから、投資により損失を出してしまった場合は必須のテクニックです。
*ただし、一般株式(非上場株式)およびNISAは適用外です。
損益通算とは、上場株式の譲渡損失を、その年の利子・配当所得と相殺。税金を抑えることができる制度です。「配当利益はあったが、譲渡損失があった場合」や「利益が生じたA口座と、損失が生じたB口座など、複数の口座がある場合」に有効です。
●例1
例えば、「譲渡損失200万円」「利子・配当所得10万円」とします。
以下の計算より、年間を通せば
譲渡損失 :-200万円
利子・配当所得:+10万円
(-200万円) + (+10万円) = -190万円
ですから、190万円の損失です。
そして、本来なら、「利子・配当所得10万円」の利益があるので、この10万円に税率20.315%を乗じた20,315円が源泉徴収されます。
が、年間を通せば190万円の損失です。したがって、10万円の利益は相殺され、源泉徴収された20,315円が還付されます。
●例2
例えば、A証券会社のa口座で100万円の利益が出て、B証券会社のb口座で100万円の損失が出たとします。この場合、両口座間で損益を相殺でき、A証券会社の利益に対して支払った税金が還付されます。
【A証券会社の上場株式】
利子・配当所得:+100万円
100万円 x 0.20315 =203,150
つまり、源泉徴収される額は203,150円
【B証券会社の上場株式】
譲渡損失:-100万円
AとBの口座間で損益通算し、A証券会社の利益に対する源泉徴収203,150円が還付されます。
繰越控除とは、譲渡損失を翌年以降の3年間にわたり繰り越すことができる制度です。つまり、譲渡損失を翌3年間は利益と相殺できるので、大きな節税となる確定申告テクニックです。
●例3
例えば、「譲渡損失200万円」「利子・配当所得10万円」とします。
この時、翌3年間は190万円以上の利益をあげてから、課税対象となります。
ちなみに、損益通算や繰越控除は確定申告しないと適用されません。したがって、投資により損失を出した際には必ず申告するようにしましょう。
また、繰越控除は繰り越す年と翌3年間は毎年確定申告をしなければならなくなります。その間は株式を売却しなくても毎年、確定申告が必要になります。注意しましょう。
公的年金等の収入金額が400万円以下、かつ公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合には、確定申告は必要ありません。したがって、国民年金・厚生年金だけで生活している多くの方は、確定申告は必要はありません。
しかし、控除を受けることにより所得税が還付される場合があります。
国民健康保険料、介護保険料の支払いがあれば、その保険料全額が所得控除の対象となります。
生命保険料や地震保険料の支払いがあれば、所得控除の対象となります。
医療費の自己負担が10万円以上(または所得の5%以上)、またはセルフメディケーション税制(特定の医薬品購入に対しての所得控除制度)を受けられる方
寄付金控除や住宅ローン控除も該当します。
詳しくは税理士の方などにご確認ください。
確定申告においては、被災された方への負担を抑えるための制度として、「雑損控除」もしくは「災害減免法による所得税の軽減免除」があります。そして、そのどちらかを選択して確定申告を行えば、所得税の還付を受けることができます。
雑損控除とは、自然災害や火災、盗難、横領などによって損失があった場合に受けられる控除です。社会保険料などと同じく、所得控除として認められ、所得から所定の金額を控除することができます。
災害減免法による所得税の軽減免除とは、「所得金額の合計額が1,000万円以下」「被害金額がその時価の2分の1以上」という制限のもとに免除を受けられる制度です。
所得の合計額 | 軽減・免除される所得税額 |
---|---|
500万円以下 | 所得税の額の全額 |
500万円超~750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
750万円超~1,000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
参照:国税庁WEBサイト
ちなみに、雑損控除を選択して確定申告を行った場合は、住民税においても雑損控除が適用され軽減されますが、一方、災害減免法による軽減免除は、所得税には適用されますが住民税には適用されません。別途住民税の申告により雑損控除の申告も行うのがポイントです。
なお、公的支援の手続きや保険請求の手続きのためには証明書が必要になる場合があります。「罹災証明書」または「被災証明書」をあらかじめ発行してもらっておきましょう。
確定申告は手間ですが、必要に応じて申告することで節税につながります。特に「投資で損失を出した時」「年金生活を始めた時」「万が一災害に被災された時」には活きるテクニックがたくさんあります。
これらはすべて、国が認めるせっかくの制度です。ですから、使わない手はありません。
この際にきっちりと確定申告について理解を深め、正しく節税対策に取り組みましょう。
インベスターズビレッジでは主に「投資」と「ビジネス」(経営・M&A)に的を絞って取り上げています。また、様々な分野への投資の知識と実際の流れをカリキュラム+テキストに加えて、実践でも学ぶことを大切にしています。
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