レポート

イールドカーブが与える影響【スティープ/フラット/ベア/ブルとは】

2020.12.15

「スティープ?フラット?ベア?ブル?」イールドカーブの4パターン

イールドカーブとは、横軸に期間・縦軸に金利をとり、長短金利の格差(ギャップ)を1本の曲線で表したグラフです。

イールドカーブには3種類あります。

「順イールドカーブ(長期金利が短期金利を上回っていて、右肩上がりの状態)」「逆イールドカーブ(短期金利が長期金利を上回り、右肩下がりとなる状態)」「フラットイールドカーブ(短期金利と長期金利が同一レベルにあり、水平な状態)」の3つです。

そして、イールドカーブはこの3種類に加え、4つ異なるパターンがあるのですが、今回のテーマはその「イールドカーブの4パターン」。

イールドカーブのスティープ化とは?フラット化とは?
さらに、ベアやブルとは何なのか。

イールドカーブについて掘り下げます。

【用語解説】イールドカーブの4パターン

3種類あるイールドカーブには、4つのパターンがあります。

「ベアスティープニング」「ベアフラットニング 」「ブルスティープニング」「ブルフラットニング」。

さらに細分化すると、イールドカーブのスティープ化には「ベアスティープニング」と「ブルスティープニング」の2種類があって、イールドカーブのフラット化には「ベアフラットニング 」と「ブルフラットニング」の2種類があります。

この章では、まずは「スティープ化」と「フラット化」、そして「ベア」と「ブル」について解説します。

 

スティープ化

スティープとは英語の「steep」で、「急勾配の、険しい、途方もなく高い」という意味です。
イールドカーブの曲線が急角度になっている状態が「イールドカーブのスティープ化」です。

 

フラット化

フラットとは英語の「flat」で、「平らな、曲がっていない」という意味です。
その名の通り、イールドカーブは傾斜がなだらかになることが「イールドカーブのフラット化」です。

 

ベア

ベアは英語の「bear」、「熊」です。
爪を振り下ろして敵を攻撃する様子、あるいは背中を丸めている姿から、相場が下落する「弱気」な状態を表しています。

 

ブル

ブルは英語の「bull」、「雄牛」です。
角を上に突き上げて攻撃する仕草から、相場が上昇する「強気」な状態を表しています。

 

4パターンのイールドカーブ概要

イールドカーブは一般的に、景気や金融政策の状況によりスティープ化とフラット化を繰り返します。具体的には「ベアスティープニング」「ベアフラットニング」「ブルスティープニング」「ブルフラットニング」の順で繰り返されます。

この章では、その4パターンの概要についてお話しします。

 

ベアスティープニング(長期金利が大きく上昇)

景気が回復局面に至ると、中央銀行が政策金利の引き上げを行うと予想されます。債権市場では、金利が上がると債券価格が下落してベア(弱気)になります。そのため、長期金利が大きく上昇し、長期金利の上昇幅が短期金利の上昇幅よりも大きくなると、イールドカーブの傾斜が急になりスティープ化。これがベア(弱気)スティープ化を意味する「ベアスティープニング」です。

 

ベアフラットニング(長期金利の上昇幅が小さくなる)

好景気が続き、金融引き締めにより短期金利が長期金利よりも上昇し、イールドカーブの傾きが緩やかになりフラット化。これが「ベアフラットニング」です。

 

ブルスティープニング(短期金利が大きく低下)

景気後退の状態が続くと、中央銀行が政策金利の引き下げを行うと予想されます。債券市場では、金利が下がると債券価格が上昇してブル(強気)になります。そのため、短期金利の低下幅が長期金利の低下幅よりも大きくなり、イールドカーブの傾斜が大きくなってスティープ化。これがブル(強気)スティープ化「ブルスティープニング」です。

 

ブルフラットニング(短期金利の低下幅が小さくなる)

景気の後退が感じられ始めると、金融緩和により長期金利が短期金利よりも下落し、イールドカーブの傾きが緩やかになりフラット化。これが「ブルフラットニング」です。

 

イールドカーブがスティープ化/フラット化する理由

イールドカーブは先高感が見られる場合、一般的にスティープ化します。その先行感が見られるのは、大きく2つの局面に分類できます。

一つが、景気が回復して政策金利の引き上げが予想された場合。このとき、短期金利と長期金利の金利差が大きくなり、スティープ化は出現しやすくなります。

もう一つが、不況期に政策金利が急速に引き下げらた場合。このとき、短期金利の下落により長期金利が相対的に高くなり、短期金利と長期金利の金利差が大きくなってスティープ化が起こります。

一方、イールドカーブのフラット化も、スティープ化と同様、市場のベア(弱気)とブル(強気)関係します。

一つは、景気拡大が続き、金融引き締めにより短期金利が上昇。長期金利との差が小さくなるベアフラット化。

もう一つは、徐々に景気が後退して中期的な不況のシグナルが見られた場合。このとき、将来的に金融緩和を織り込んだ長期金利の低下に伴うブル・フラット化です。

 

ツイストスティープニング

時折、イールドカーブは先の4パターン以外の動きを見せることがあり、ねじれながら急な傾斜を描くことがあります。それがツイストスティープ化「ツイストスティープニング」です。短期金利が低下、長期金利が上昇し、イールドカーブがねじれるようにスティープ化する状態です。

このツイストスティープニングは起こりやすい時があって、例えば、金融緩和など残存期間が短い国債の利回りの低下要因がある一方で、金融引き締めなど残存期間が長い国債の利回りの上昇要因があると、長短の国債の利回りの見通しの違いにより起こりやすくなります。

いずれにせよ、ツイストスティープニングは非常に特殊な状態です。

 

まとめ

3種類あるイールドカーブは、4つのパターンがあります。

「ベアスティープニング」「ベアフラットニング」「ブルスティープニング」「ブルフラットニング」。

そして、それらは先の順にサイクルします。

景気が回復局面に至ると中央銀行が政策金利の引き上げを行うと予想され、長期金利が大きく上昇、ベアスティープニングが起こります。それから、長期金利の上昇幅が小さくなるベアフラットニングを迎えると、やがて短期金利が大きく低下しブルスティープニングの局面に突入。さらに短期金利の低下幅が小さくなればブルフラットニングが訪れ、景気が回復すれば再び長期金利が大きく上昇してベアスティープニングが起こります。

このように、イールドカーブを見ればこれからの景気が予想できますから、投資をするなら必須の知識と言えるでしょう。

しかし、投資はイールドカーブを見ただけでできるほど単純なものでもありません。

インベスターズビレッジではそれを踏まえ、主に「投資」と「ビジネス」(経営・M&A)に的を絞って取り上げています。また、様々な分野への投資の知識と実際の流れをカリキュラム+テキストに加えて、実践でも学ぶことを大切にしています。

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