2020.12.01
ESG投資はすでに欧米を中心に広く浸透しており、投資残高も年々拡大傾向にあるばかりか、もはや世界的な潮流となりつつあります。
実際、公的年金基金などはリスク管理の側面からESGを捉え、中長期的な企業価値向上が期待できる企業を見極めることで、投資リスクの軽減を図っています。
では、そんなESG投資とはどんな投資なのでしょう。
従来型の財務情報のみを重視する投資とはどんな違いがあるのでしょう。
今回は、世界が注目し始めている「ESG投資」がテーマです。
ESG投資は、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの単語の頭文字をとったものです。
環境(Environment)への配慮は十分か。
具体的には、二酸化炭素の排出量を抑えているか、環境汚染をしていないか、再生エネルギを使用しているか、など。
社会(Social)に貢献できているか。
具体的には、地域活動への貢献や労働環境の改善、女性活躍の推進などに取り組んでいるか、等。
企業統治(Governance)できているか。
具体的には、収益をあげながらも不祥事を防ぐ経営ができているか、法令遵守できているか、など。
こうした3つの観点から、企業の将来性などを分析・評価した上で投資先を選別する方法。それが「ESG投資」です。
これまでは、投資先を判断する際の評価材料は、利益額や利益率、負債額やキャッシュフローなどの財務情報が主でした。
しかし、それだけでは企業の持続性や長期的収益性は判断できないと考えられるようになり、今では財務情報の評価に加え、企業のサステナビリティ(持続可能性)を視野に入れるのが世界的な流れです。
つまり、「儲かっている」「財務状況が良い」という側面だけでは、企業の本質は評価できない、というわけです。
実際、ESGを軽視した企業の株式は、欧州を中心とした海外の機関投資家により「ネガティブ・スクリーニング(特定の社会的または環境に対する基準を満たさない企業を排除すること)」で排除され、結果的にESGを重視する企業に比べて相対的に価値が劣後する傾向にあります。
もはやESGへの取り組みは企業にとって必須の経営課題となっているのです。
なぜここ数年でESG投資が注目を集めるようになったのでしょう。その理由として、大きく二つの点が挙げられます。
ESG投資が重要視されている背景については、2006年、当時の国連事務総長アナン氏が機関投資家に対してPRIを提唱したことが大きなきっかけとなっています。
PRIとはPrinciples for Responsible Investmentの略で、日本語では「責任投資原則」を意味します。
このPRIは、機関投資家の意思決定プロセスにESG課題を反映させるべきとした世界共通のガイドライン的な性格を持ち、6つの原則から成り立っています。
そして、2008年のリーマン・ショック以降では、短期で利益を追求する投資スタイルへの批判は高まるばかりで、世界の投資機関の多くはこのPRIに署名しました。
2019年3月末時点では、2,400近くの年金基金や運用会社等がPRIに署名しており、うち年金基金などアセットオーナーの署名は432、その運用資産残高の合計は20兆ドル以上です。日本でも、150兆円以上の年金資産を管理・運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2015年にPRIに署名済みです。
このように、PRIへの署名が背景となって、世界の投資マネーはESG投資へ向かうようになったのです。
地球温暖化や資源の枯渇など、環境問題について耳にしない日はないほど、昨今では環境問題への関心は高まっています。そのため、環境問題と向き合う姿勢は必然的に求められ、その課題に対して取り組む企業も必然的に評価されます。
投資家は評価される企業に投資しますから、ESG投資が注目を浴びるようになったのは当然の結果です。
ESG投資にはいくつかメリットがありますが、ここでは代表的な3つを解説します。
長期にわたる企業経営においては、経済環境や自然環境などの変化、および法律や規制等の変更、労働に対する価値観の変容、購買行動の変化などは、企業にとって大きなリスクとなりえます。が、ESGに取り組む企業は一般的にこのようなリスクへの対応力が高い傾向にあり、長期運用としての投資先には適しています。
また、最近ではESGに取り組まない企業から投資資金を引き上げる「ダイベストメント」などの動きも見逃せません。例えば、年金基金などの機関投資家は、実際に石油やタバコなどに関連する企業からダイベストメントを行ったりしています。
つまり、ESGに消極的な業界は長期的視点において株価が下落する可能性があるため長期運用には不向きであり、反対にESGに積極的に取り組む企業への投資は、このようなリスクに事前に対処することが可能、つまり長期運用に適していると言えるのです。
短期で利益を追求する企業の投資評価は、振り幅が大きくなりがちです。業績が良ければ大きく上昇し、悪ければ大きく下落する傾向にあります。また、不祥事により企業価値が急落しやすい特徴も持っています。
しかし、ESG投資においては、投資先となる企業の資産価値は長期的視点では大きく変動しづらいと考えられています。そのため、投資家は安定した運用が期待できます。
ESG投資の投資先は、ESGに取り組む企業です。つまり、環境や貧困、労働、人権など様々なESGの課題に取り組んでいるため、ESG投資を通じた投資は社会的課題解決を後押しする投資であり、社会貢献につながります。
ESG投資も投資である以上、リスクがありデメリットもあります。
ここではESG投資の代表的なデメリットを2つ解説します。
ESG投資における最大の特徴は、資本主義下における短期主義(短期的な利益を追い求める投資スタイル)の企業ではなく、ESG課題に取り組む企業への投資です。
投資は、一般的には効率性を重視して行います。
しかし、上記の通りESG投資では、リターンと等しくESGへの貢献も考慮しますから、短期的視点では一見効率が悪くなることがあり、リターンは小さくなる傾向にあります。
財務情報の評価だけでも相当な知識が求められますが、ESG投資ではその上、ESG要素の視点からも投資判断を下す必要があります。そのため数多くの資料分析しなければならない傾向にあり、投資先の選定にはそれなりの負担や手間がかかります。
投資で重要な視点の一つは、企業の持続可能性です。そして、ESGはその可能性を推し量る目安となります。しかし、あくまでそれは視点の一つです。
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットは「企業は社会的大義よりも株主の利益を優先すべき」との発言も行っていて、
投資は一つの側面からでは行えないの実情です。
インベスターズビレッジはそれを踏まえ、主に「投資」と「ビジネス」(経営・M&A)に的を絞って取り上げています。また、様々な分野への投資の知識と実際の流れをカリキュラム+テキストに加えて、実践でも学ぶことを大切にしています。
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